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【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。
次の日。
フジ
『おはよーー。』
ショウ
『おう。早かったじゃねぇか。 いつも定休日は昼前に起きるくせに。』
フジ
『えっ。だって美味しい甘酒を作りたいからよ。お仕事のために。 』
ショウ
『ほほう。職人の気持ちが多少分かってきたみてぇだな。 じゃあこの甘酒を土星調理で仕上げよう。』
フジ
『はい!!』
ショウ
『今、甘酒はこんな感じだ。』
ショウはアルマイトの鍋蓋を開けた。
開けると甘い砂糖のような香りが広がった。
中には粥から糊状になった元米と米麹の姿があった。
フジ
『うわー。とてもトロトロしてる。』
ショウ
『まだ発酵しているから麹菌が生きている。このままでも甘くて、 身体に良い甘酒なんだが、 そのままにすると発酵しすぎて酸っぱくなって腐る。 だから発酵を止めて長持ちさせるために火入れをして甘酒を仕上げ るんだ。』
フジ
『あらら。そんなことに。』
ショウ
『だから、 今回は木星の調理でそのまま飲む分と火入れをして発酵を止めた甘 酒を両方作る。』
フジ
『なんとお得な。じゃあまず、 そのままの甘酒をいただいても良い?』
ショウ
『まぁ急かすな。今淹れる。』
ショウは湯飲みにトロトロした出来立ての甘酒をさじで入れた。
フジ
『いただきまーす。……おぉ。ほんのり甘くておいしーー。』
ショウ
『これが砂糖じゃないのが不思議だよな。 このままの甘酒は腹の調子も良くしてくれるから食い過ぎた夜に仕 込んで朝飲むのもアリだ。』
フジ
『おぉ。それは良い。』
ショウ
『じゃあこれからまたこの雪平鍋を…取り出して…。 昨日の全粥を作るみたいにこのまま煮立たせてくれ。』
フジ
『えっ。そんなやり方でいいの?』
ショウ
『そうだ、ただ焦がさないようにな。』
フジ
『わかりましたーー。』
フジは小さな雪平鍋をコンロに置き同じくらいの火の勢いにして沸 騰させた。
フジ
『どれくらい沸騰させればいい?』
ショウ
『沸騰したら3分ぐらいで大丈夫だ。発酵は止まって甘さも増す。 』
フジは数分煮詰めて火を止めた。
フジ
『できたー。なんかとても甘い匂いがするー。』
ショウ
『これが土星調理の発酵を止める。しっかり煮切るだ。』
フジ
『はーい。じゃあまた湯飲みに入れて…。』
フジは加熱をして煮込んだ甘酒を湯飲みにゴムベラを使って入れた 。
ショウ
『それじゃあ、いただくとするか。』
2人は煮込んだ甘酒を飲んだ。
フジ
『うわーーー。めちゃくちゃ甘ーい。』
ショウ
『そうだろ。発酵は止まるが、甘さは加熱によって強くなる。 これはそのまま甘味料としても使えるんだ。 煮物の甘味に使うこともできる。
俺はこのままの甘さは苦手だからお湯や豆乳で薄めて飲んだりする 。』
フジ
『ホント。こんなに違うなんて。色々使える甘味になるんだねぇ。 』
ショウ
『よし。これでだいたいの調理法は終わりだ。 あとは自分で色々と時間作って練習するんだ。』
フジ
『はいっ。今までありがとうございました。 あとこれから自分で新メニュー考えてみたら作ってみるわね。 その時は評価お願いね。』
ショウ
『おうっ。楽しみにしているぞ。』
【ショウメモ】
木星と土星調理はどうしても時間がかかる。 でも作ったら保存も利くようにできるから、 ビンで保存しておくと良い。
また、土星はの発酵を止める。しっかり煮切る。だけではなく、 蒸留とか熟成もあるがこれは酒やチーズの応用だから自分で調べて くれ。
こうして、 フジは全ての惑星調理の一部をショウから教えてもらった。
フジは自分の新しいメニューを考えて、 暇な時は食材や調理法のアレコレを調べていた。
そしていくつかの候補が決まって作ろうと決めた時には……
その約束と希望が叶う事はなかったのだった。
つづく
ここで
重大発表!!
なんと3月に閉鎖していた元あやかし食堂の掲載サイト
が復活しました。
ですので、このストリエであやかし食堂は続きます。
どうぞこれからの彼女、彼らの物語をご覧いただけますと幸いです。
フェネクス聡志