あやかし食堂

【あやかし食堂】3太陽調理法

 

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 

【弟とのおもいで】

 

 

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

 

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

 

 

 

 

ショウ
『フジ!!一応お前もめしやの妖なんだから、給仕だけじゃなくて料理のやり方も覚えないとな。』

 

フジ

『うへぇー。』

 

ショウ

『何がうへぇー。だよ。簡単なものから教えるから時間を作って自主練してくれよ。』

 

フジ

『んーもう、分かったわよ。超簡単なのを始めにお願いね。寝ててもできちゃうのとか(笑)。』

 

ショウ
『てやんでぃ!!ばろきしょい!!寝ててめしができたら神さんいらねぇんだよ。』

 

フジ

『ひぇーー。お手柔らかに、ショウさまーー。』

 

ショウ
『じゃあ、教える。家に代々伝わる医食同源の書。【既死改生の厨活】にある惑星調理法の太陽を今日は教える。』

 

フジ
『ししょー。お願い致します!!』

 

 

ショウ
『太陽の調理法は生食と乾燥。つまり太陽の恵みをそのまま食べられるやり方だ。』

 

フジ
『生だと……サラダや橘を絞ったジュースとかもそう?』

 

ショウ
『そうだ。加熱しないメニューだな。』

 

フジ
『乾燥だと……なんだろ?ジャーキーとかドライフルーツとか魚の干物とか?』

 

ショウ
『そうだ。こちらは生にはならないが、太陽の光と恵みを浴びて作るからより栄養も取れる。
ちなみに海苔も、塩も太陽だ。ちゃんと天日干ししているなら。』

 

フジ
『天日干しではない場合はどうなるの?』

 

ショウ
『それはのちに出てくり火星になる。

乾燥と加熱を火力を使って行うからな。

ちなみにドライフルーツも天日干しではなく他のやり方で作った場合は太陽にならない。』

 

フジ
『お日様にずっと当ててるのは時間かかるし。
鳥や他の生物に食べられてしまう事もあるから今は人間が作る工場で作られているのが多いよね。』

 

ショウ
『どの手間を省くか。
どの手間とこだわりはしっかり掛けるか?
あと効率良くしないと飯屋はできねぇからな。
全て完全無欠にはならねぇが、出来ることを精一杯やって仕舞えばいい。』

 

フジ
『じゃあ、そろそろ一例のメニューを……。(お腹空いたー)』

 

 

ショウ
『今日はきゅうりの海草和えだ。
とても簡単にできるから実際に包丁を持ってやってみてくれ。
まず、きゅうりを2ミリくらいの薄さで輪切りだ。」

 

フジ
『うわぁ…きんちょーー。』

 

 

ストン……ストン……。

 

とゆっくり不規則な包丁の音がまな板から響いた。

 

 

フジ
『2ミリってむずかしーー。これくらいの厚さ?』

 

ショウ
『あぁ。それくらいでいい。ちなみに包丁を使うのはこの作業しかないから2本全部切ってくれ。』

 

フジ
『はーーい。』

 

 

ストン……ストン……。

 

 

なんとかフジはゆっくりではありながらもショウが用意したきゅうりを全て切り終えた。

 

 

まな板には薄いきゅうりが山盛りになっていた。

 

 

 

ショウ
『おぅ。遅かったじゃねーか。日が暮れるかと思ったぜ。』

 

フジ
『5分しか経ってません!!じゃあ次お願いします。』

 

ショウ
『次は塩昆布軽く一掴み(0.5gほど)と醤油小さじ1/2(2.5mlほど)をいれてきゅうりを混ぜてしばらく置いておくだけだ。

塩昆布は乾物だからそのまま太陽調理で出来た食材っていうお得で色々な料理にも使える。
もちろん醤油もだ。』

 

フジ
『醤油も太陽なの?』

 

ショウ
『いや。醤油は太陽じゃない。
もっと後に出てくる木星と土星になるな。
味噌もだが発酵食品は多少複雑だから。
今は味付けに必要な調味料と思っていてくれれば良い。』

 

フジ
『はーい。じゃあ大きな器にきゅうりを入れて、塩昆布、醤油を混ぜて。
ちょっと冷蔵庫で5分くらいでいいわよね。』

 

ショウ
『あぁ。それくらいでいい。』

 

 

5分後。

 

 

 

フジ
『うわー。きゅうりが小さくなってる。』

 

ショウ
『きゅうりや生の野菜は塩の強いものと混ぜると水が出て小さくなるんだ。

これくらいの軽い浅漬けやサラダは簡単な太陽調理の1つ。
この水が出たきゅうりをまたまんべんなく混ぜる。それで出来上がりだ。』

 

フジ
『わーい。できた。
ランチの小鉢や…あっおつまみの1つにもなるよね♪』

 

ショウ
『…わかったよ。
ほんの少しだけだぞ、あまり呑み過ぎるなよ。』

 

フジ
『えへへ。頂きものの清酒と一緒に…

 

いただきまーす。

 

 

うーん。おいしーー。』

 

ショウ
『おい!!先に酒から呑んでどーすんだ!!

きゅうりをきちんと食え!!』

 

 

と言いショウはフジが作ったきゅうりの海草和えを食べた。

 

 

ショウ
『おぉ。いける。
これはまぁ簡単だったからな。
よし!!明日から朝の仕込みでお前がコレを作れ。』

 

フジ
『えっ良いの?簡単だからうれしー。
また、私に出来そうな料理あったら教えてね。ショウ。』

 

ショウ
『まぁ考えておく。
あとは自分でもどんどん勉強と練習をすることだぞ。
なんでも全て教えてもらって
その範囲でこなそうとしたら店はできないからな。』

 

フジ
『うへぇーーー。……わかりました。』

 

 

 

 

こうしてフジは太陽調理の1つ。

 

 

きゅうりと海草和えを習得した。

 

 

 

【ショウメモ】

野菜はきゅうりだけじゃなく、キャベツや50度の水で1分つけたモヤシでも大丈夫だ。
俺はあまり好きじゃないが巷にある出汁醤油(めんつゆ)と玉ねぎでも生でバリバリ食べられる。

 

好みで生の卵黄を落として鰹節も混ぜると玉ねぎの辛さを気にせずに食える。

 

とりあえず、生で食える野菜なら何でも挑戦してみろ。

 

 

 

つづく