あやかし食堂

【あやかし食堂5】水星調理メニュー

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 

 

【弟とのおもいで】

 
 
 
 

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

 

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 
 
 

『よし。今日は水星の調理だ。』

 
 

『ししょー。お願いします。』

 
 
 

『水星は温度、時間、撹拌、pH調整などで形が変わる。と覚えてくれ。』

 
 

『なんかいきなり難しい用語が…。』

 
 

『生クリームでいうと分かりやすい。生クリームはそのままだと液体のクリーム。

 

それを鍋で温めると幕が張ったクリーム。

 
 

それにレモン汁を加えて混ぜると簡単なチーズができる。

 

温めたクリームに砂糖を混ぜて溶かして冷やして固めるとクリーム味のアイスができる。』

 
 
 
 

『あっなるほど、そう思えば形が温度やその他の処理で変わって美味しくなってる。
 

今思い出したんだけど、
 
果物を人間が使うミキサーっていう機械に入れてジュース作るのも水星?』

 
 

『そうだ。混ぜる。つまり撹拌に当てはまるしな。また、生クリームも砂糖入れて泡立てれば、コーヒーや洋菓子に必要な固さのクリームに変わるだろ?』

 
 

『あっ。なんか楽しくなってきた。』

 
 
 

『フジは本当に単純な奴だな。』

 
 
 

『なんですって!!もう…お茶目っていってよ。』

 
 
 

『へいへい。じゃあ、今日も自分で作ってみてくれ。食品庫の中なら何でも使っていいぜ。』

 
 

『えへへ。ずっとクリームの話してたから、クリームのお菓子作ろー。』

 
 
 

『だが、さっき俺が言ったチーズやアイス以外で作ってくれよ。』

 
 

『うわっ。いきなり追加ルール。分かったわよ。あと、今回の制限時間は?』

 
 
 

『今回は温度を変化させたり、混ぜたりする作業もあるから90分だ。その間俺は明日の食材の買い出しに行ってくるから。留守番も含めてよろしく頼むぜ。』

 
 
 
 

『はーい。いってらっしゃーい。』

 
 
 
 

ショウは店を出て行き買い出しへ。

 
 
 

フジは食品庫へ貴重な生クリームとその他自分がイメージした料理になるものを2つ持ってきた。

 
 
 
 

材料は

 

生クリーム

 

砂糖

 

粉ゼラチン

 

 
 
 
 

『よーし。これでババロアを作るぞ。』

 
 

 
 

フジはまず、粉ゼラチン10gを大さじ1の水と混ぜてふやかした。

 
 

その間に

 

持ってきた生クリームの3分の1の200mlをミルクパンに入れて火に掛けた。鍋の生クリームが沸騰寸前になったら火を止め先ほどのふやかしたゼラチンを入れ溶かした。

 
 

そして残りの生クリーム400mlと砂糖60gをボウルに入れ泡だて器で撹拌。少しトロミが付くくらい(3分立て)に泡立てたら、鍋のゼラチンクリームをボウルに入れまんべんなく混ぜた。

 
 

それから、小さな耐熱のガラス容器4つに流し入れ、4つまとめて冷蔵庫に入れ冷やし固めた。

 
 
 
 

『えへへ。固まるの楽しみー。ショウが気に入ると良いなー。』

 
 
 
 

フジは冷え固まるまで今までショウから教えてもらった事を思い出しながら、自分のノートに調理のまとめを書いた。

 
 
 
 

『太陽は生食と乾物。太陽の恵み。月は茹でたり蒸したり煮込んだり、スープにしたりする調理。っと…。』

 
 

そして50分くらいしてショウが買い出しから帰ってきた。

 

ショウは珍しいくらいの笑みを浮かべていた。

 
 

 
 

『ただいまー。へへへ。フジ良いもの仕入れてきたぞ。』

 
 

『おっかえりーショウ。えへへ。こっちも良いもの作って待ってたわよー。』

 
 

『おうっ。じゃあ先にフジから作ったものを見せてくれ。』

 
 

『じゃっじゃーん。ババロアだよー。生クリームを贅沢に使ってみたよ。』

 
 
 

『あっ!!やっぱりそうか。生クリーム系の菓子は作るかと思っていたから生クリーム買足してきてよかったぜ。さて…俺のはこれだ。』

 
 
 
 

ショウは茶色の紙袋からプラスチックパックに入ったいくつか入っている赤い木の実をテーブルに出した。

 
 

『うわっ。すごい。これイチゴ!!あの温かい海の町の石垣にできる…。』

 
 

『そうだ。この酸っぱさはババロアや生クリームの菓子に合うって人間の料理雑誌に載ってたから。あと売れ残りだったから安く買えた。』

 
 

『わーい。じゃあ薄く切って…ババロアの器に乗せて…かわいーー!!』

 
 

『本当に女子はこういったまろやかな菓子が好きだよな。一応水星の調理ということは合格。
ただ、今回はババロアだからいいけど、生クリームにバターや卵、砂糖が多めで小麦粉も混ぜて焼くようなクッキーやケーキはまた後で出てくる惑星調理になるからな。』

 
 

『えっこれからお菓子また作れるの?うれしー。』

 
 

『菓子ばかりじゃ病気になるぞ。まぁとりあえず今日はイチゴ乗せババロアをいただこう。』

 
 

『はーい。いただきまーす。』

 
 

 
 

 
 

こうしてショウのイチゴをちょい足ししたババロアを美味しく2人はいただいた。

 
 
 
 

【ショウメモ】

 
 

ババロアでなくても寒天で固めたゼリーでもOK。水ようかんは寒天とあんこを使った立派な水星調理の菓子だ。また、たれやドレッシングも撹拌して作るから水星にあてはまる。擦ったとろろも混ぜた卵白も形が変わるから色々な料理に使えるぞ

 

あと残ったイチゴはジャムにしておいた。ジャムはレモン汁の酸でゲル化して固まるけど煮詰めているので月。まぁ水星も使用した月調理と捉えてくれ。

 

何種類か合わせた調理はいくらでもあるからどんどん経験してみてくれ。

 
 

 
 

 
 

つづく