あやかし食堂

【あやかし食堂6】火星、金星調理メニュー

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

ショウ

『今日はまたもう少しハードルを上げるぞ。
きちんと1人でも厨房の仕事が出来るようにだ。』

 

フジ

『うへぇーー。また難しくなるのー。あと、お店に出てもショウより美味しく作れるか不安だよー。』

 

ショウ

『その不安をどーにかする為の修行だろ。やり続けないと上達しない。さっさとやるぞ。』

 

フジ

『わかりましたぁー。』

 

 

ショウ

『さて。今日は一度に2品。手際良く作ってもらう。』

 

フジ

『えっ。2品!!』

 

ショウ

『店をやると色んな注文をうけるだろ。違う料理が一度に何個も来た時にどうするか?
それに慣れないとな。』

 

フジ

『むーー。簡単な料理だといいなー。』

 

ショウ

『今回の2品の調理法は火星と金星の調理だ。
両方とも加熱。火を使うが扱い方が違う。

 

まず火星は直接火で炙る調理法だ。
炭火焼きや乾煎り、火のみ。道具は網やフライパンでも油は使わない方法だ。』

 

フジ

『つまり、焼き鳥や食材をローストする。ということね。』

 

ショウ

『そうだ。シンプルに。
あと金星は油を使う。揚げ物や炒め物、菓子でもクリームや油の多い焼き菓子になれば金星になる。』

 

フジ

『うわっ。すごく美味しそー。……でも待って、コンロ最低でも2つ使って同時調理って……とても難しいじゃない。』

 

ショウ

『つべこべ言わすにやるんだ。ここまでしっかり自分の頭使ってやってきたからもうひと踏ん張りだ。』

フジ
『わかったわ。じゃあまた食品庫にいって頭冷やしながら何作るか考えてくるわ。

 

ショウ
『今回の時間は45分。焼いたり揚げたりするから火の扱いには気をつけろよ。』

 

フジ
『はーい。』

 

そう言ってフジは食品庫へ行った。

 

ショウはいつものホールの4人掛けの座った。

 

久しぶりに手に入った紅茶を淹れようと背後の棚に隠してある茶漉し、ティーカップを取り出した。

 

そして茶漉しに紅茶を小さなさじで2杯、やかんの残り湯を入れて数分蒸らした。

 

フジが食品庫から出てきたのを見て、ショウは多少の心配はありながらも姉であるフジの力を信じていた

 

なんとなく、自分だけでなく他の妖たちが人間が作り出している新しい生活に淘汰されてしまうこと。

 

自分も対応できる部分はあると思うが、やはりそこは女が一番環境の変化に対応できる。

 

その将来の期待も掛けて初歩的な所をショウは教えようと決めたのであった。
あと、自分がもし何かあった時の為でもあった。多少亡くなった母親から言われていた5臓の働きが普通より弱いこと。

 

それも気にかけていた。人間で言えば壮年を過ぎている。若いわけではないからリスクを考えて行動しないといけない。

 

そんな想いを数十分繰り返して紅茶をすするのだった。

 

厨房が見えないこの席は視覚以外の情報でできる料理を想像しながら待つことが出来たり、内密な状態で話をしたい時にはとても良い。

 

だから基本ランチの時は案内しない。3人以上の場合以外は。

 

香ばしい何か肉や魚以外の何かの香りに、土砂降りの雨に似た高温の油が音を立てている。
ショウはできる料理を楽しみに待った。

 

フジ
『できたわよー。ふぅ。なんとか40分でできたー。』

ショウ

『おぅ。何が出来たんだ?』

 

フジ

実はお肉を焼きたかったんだけど無かったから厚揚げの網焼きが1つ。

 

それと、金星の揚げ物を付け合わせとして、ナスとビーマンの素揚げ。
その2つにお好みでショウガ醤油とかつおぶし。が付け合わせでーす。』

 

ショウ
『おおっすげぇ、別の調理法を1つの皿にまとめるとは。調理法としては合格だ。』

 

フジ
『えへへ。ありがとー。あとやっぱり…お酒もちょっと飲んで良い?』

 

ショウ
『…やはりそれが目的で作ったのかよ。ヤレヤレ。今日は良いが、ちゃんとランチが主で使える料理も作っていけよ。』

 

フジ
『はーい。じゃあ、そのためにはお肉とお魚も切らさないようにしてくださいねー。』

 

ショウ
『へいへい。じゃあいただこう。』

 

フジ
『いたたきまーす。』

 

こうしてフジは2つの調理も同時に行えるようになった。

 

厚揚げの火の通りも程よく、油抜きを軽くしていたのでくどさがなかった。

 

また、野菜の揚げ物もあく抜きと水気をしっかり切る手間をフジはショウがやっているところをしっかりと見て覚えていたので

 

揚げ物も失敗せずに行えたのであった。

 

【ショウメモ】

 

揚げ物は水分が多い食材は必ず油跳ねを起こす。イカの天ぷらは特に跳ねるので気をつけること。

 

また、網焼きも肉や魚で脂の多い部分を焼くと火に勢いが付きすぎて火事になりやすいので一度に大量の脂身は焼かない事だ。

 

特にカルビ、ホルモンは注意。

 

 

つづく