あやかし食堂

【あやかし食堂】4月調理法

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 

【弟とのおもいで】

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

 

 

ショウ

『よし。今日は月の調理法を教える。』
フジ
『はい。おねがいしまーす。ししょー。』
ショウ
『月は生じゃなくて、加熱してあるもの。イメージで言えば加熱した液体。
汁物や土鍋で炊いた飯、あとは煮物。液体と食材が一緒に加熱されて出来る調理だ。』
フジ
『火は使うけど、お鍋で煮炊きする程度でできるごはんなのね。』
ショウ
『そうだ、注意点としては焦げ付きだけは気を付けないといけない。炭は旨くないし、身体に毒だからな。』
フジ
『はーい。ちゃんと火のそばから離れません♪』
ショウ
『よし!!じゃあ今回から厨房内にある食材と厨具と調味料で自分で作ってもらう!!』
フジ
『えーーー!!教えてくれないのーー?』
ショウ
『ばろきしょい!!自分の創造力とある一定の規則だけ守れば料理は作れる。あの太陽の調理だって俺がじぃさんの見様見真似で作った初めての料理だったんだぜ。
失敗してもいいから自分がおいしくできたイメージが浮かぶ料理を逆再生してみろ。すると何を作ればいいか?が分かる。』
フジ
『うーーーーーん。分かったわ。ちょっと想いふけってやってみるわね。』
ショウ
『時間は30分だ。』
フジ
『うへぇーーー。分かりましたぁ。』
ショウはそのまま厨房の外のホールの4人掛けの席でほうじ茶を飲み、フジは食品庫へ行った。
フジは食品庫内のにおいと自分が何を食べてみたいか。
ただ月の調理法のルールだけは守った状態で考えてみた。
5分くらいして
フジは食品庫から厨房へ戻り調理を始めた。
フジ
『じゃあ始めるわねー。ちょっと…恥ずかしいからあまり見ないでね。』
ショウ
『あぁ。後ろ向いて本読んでるからあと25分だから時間だけは守れよ。』
フジが食品庫から持ち出したのは
さつまいも
本みりん
醤油
そして、炒ってある黒ゴマ。
さつまいも1本を乱切りにし、水が入った雪平鍋に入れひと煮立ち。
それから本みりんを大さじ1入れて甘い香りが漂ったあとに醤油も同量入れ煮る。
さつまいもに竹串が刺さったら火を少し強めにして味が全体的に絡むようにさつまいもがつぶれないように軽く混ぜ火を止めた。
煮物用の器に盛り付け最後に黒ゴマを振りかけて、完成させた。
フジ
『お待たせしました。時間20分でなんとか完成!!』
ショウ
『ん?これは甘藷煮か。とても地味だな。』
フジ
『んーとね。なんかさ。悪い事も思い出しそうだけど、戦時中さ…
2人で雑炊程度の食堂だったけど米は全部お客様用の雑炊にして、残っている材料はさつまいもだけで水で煮てそのまま食べていたじゃない。』
ショウ
『あぁ。あの時はみんな生きるだけでも大変だったからな。まずくても腹に何か入れておかねぇと死んじまうからな。』
フジ
『その頑張って乗り越えたご褒美♪さつまいも煮をとても甘くて香ばしい醤油味にしましたーー!!ってところかな。』
ショウ
『ご褒美にしては地味過ぎるがまぁいいだろ。いただきます。』
ショウはさつまいも煮に箸をつけた。
横でフジがワクワクしたまなざしで見つめ、ショウは口に入れ咀嚼。そして飲み込んだ。
フジ
『どっ、どう?美味しい?』
ショウ
『ガキには良いかもな。』
フジ
『それ…どういうこと!?』
ショウ
『甘くて醤油の味もしっかりしている。でも、俺たちのように乗り越えた奴らの中には甘藷煮や馬鈴薯煮を見るだけで戦争の時の事を思い出して苦しむのがいるかもしれない。』
フジ
『あっ。そっそうか。…ごめん。』
ショウ
『俺は平気だけど、たまにそういう奴もいる。だから提供するときは煮物は選べるようにするのも良いかもな。同じ月調理ならほうれん草のお浸しでも大丈夫だから煮物どちらがいいか?って。』
フジ
『そうね。匂いと味、触感は記憶を思い出させることがあるしね。気を付けるわ。』
ショウ
『あと、生まれつき食べられない食材がある奴もいる。俺が品書き表に食材を入れているのはそのためだ。
医食同源。時に薬も食べ物も時には毒になってしまう事もあるんだ。』
フジ
『今日。とても良い事聴いた。』
ショウ
『そこも考えながらやっていこう。ただ…今日の甘藷煮は旨かった。それは合格!!以上。ごちそうさま。』
こうしてフジは食べ物は美味しければ良いということだけではなく、食事が人生に影響を与えてしまう力がある。そのショウの言葉を教訓にするのであった。
【ショウメモ】
あまり神経質になる必要はないが、ここ10年。人間の食べ物、特に工場
で加工した食品もたくさん出てきている。味もしっかりしていて飽きもこない。悪いとは言わないが、食べ過ぎると栄養の摂り過ぎと偏りにも繋がる。毎日同じ物ばかりを食べないことだ。
それにより病気も増えてきたりして体の変化が著しくなっているのかもしれないな。

 

 

 

つづく