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【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。
ショウ
『よし。今回で惑星調理法はおしまいだ。木星と土星をやるぞ。』
フジ
『えっ。今回も2つ作るの?』
ショウ
『だが、今回はオレが教える。木星と土星は時間がかかるからな。
フジ
『わーい。嬉しい。ちなみに木星と土星の料理ってどんなもの?』
ショウ
『簡単に言えば発酵食品を作る調理法だ。あと、
フジ
『発酵ってことはお味噌や醤油やお酒もそうなの?』
ショウ
『ああ。あとヨーグルトやぬか漬けもそうだ。』
フジ
『うーん。そう聞いたら1時間じゃ作れそうにないわね。』
ショウ
『だから、今回は1晩(8時間~10時間)
フジ
『あっそれならうれしい。明日は定休日だし、
ショウ
『じゃあ始めよう。今回は甘酒だ。
フジ
『おっ。いいねー。じゃあ早く始めよー。』
するとショウは今日の営業で残った白飯のどんぶりと米麹の入った
ショウ
『まず、残った白飯とお湯をナベに入れて全粥を作ってくれ。』
フジ
『はーい。ちなみにおかゆは月の調理だよね。』
ショウ
『そうだ。その全粥が今回の甘酒の素になるから作ってくれ。』
フジ
『かしこまりーー。』
フジは小さな取っ手の無い雪平鍋に白飯とお湯を入れてほぐしなが ら10分ほどで全粥を仕上げた。
フジ
『はーい。できたわよー。』
ショウ
『よし、じゃあその粥の鍋に麹をちぎって入れて混ぜてくれ。』
フジ
『はーい。よし……。こんな感じかな?』
ショウ
『ああ。あとは一回り大きなこのアルマイトの鍋に熱湯を入れて… 。』
ショウは大きめの直径26㎝ くらいのアルマイトの鍋に熱湯を入れてそのお湯に先ほどの小さな 雪平鍋を浮かべて蓋をした。
ショウ
『よーし、これで朝まで待つ。 ただ温度がだんだん低くなってくるから寝る前に俺が一回お湯を一 煮立ちさせておく。』
フジ
『あらっ。ほったらかしでできるんだ。でも温度の管理は大変ね。 』
ショウ
『まぁ… 本当は電気炊飯器の保温機能を使えば粥から甘酒まで1台で出来て しまうが、 ウチはまだそんなにたくさんの米を炊いたりする位のお客が来ない からな。』
フジ
『じゃあもっとお客さん増えたら電気炊飯器買おう♪ そうすれば甘酒屋さんもできるね。』
ショウ
『まだまだそれは先の話だろ。 とりあえず今回は作り方を覚えてくれ。ここまでが木星の調理法、 朝になったら発酵を止める土星を教える。』
フジ
『はーい。じゃあ、 朝ちゃんと起きるために今日は早めに寝まーす。』
ショウがヤレヤレという顔をしながら鍋の様子を見ていた。
つづく・・・。
フジ
「えっ今回はつづきありなの?」
ショウ
「少し楽しみは後にとっておけって話かもな。」
【ショウメモ】
この甘酒は夏はもちろん病気等で食欲が湧かない時に好みの薄さで 飲んだりしても大丈夫だ。ただ、 麹菌で発酵させないと独特な栄養や身体に作用する物質は出来ない 。それには植物と同じように育てる時間が必要だ。
生き物に見えなくても小さい命をいつも俺たちは取り入れているこ とを忘れるな。こう、 息をしているだけでも見えないバクテリアも命が消えている。
つづく