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【あやかし食堂8】木星、土星調理メニューつづき

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 
 
 
 

【弟とのおもいで】

 
 
 

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

 

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。
 
 
 
 

次の日。

 

フジ
『おはよーー。』

 

ショウ
『おう。早かったじゃねぇか。いつも定休日は昼前に起きるくせに。』

 

フジ
『えっ。だって美味しい甘酒を作りたいからよ。お仕事のために。

 

ショウ
『ほほう。職人の気持ちが多少分かってきたみてぇだな。じゃあこの甘酒を土星調理で仕上げよう。』

 

フジ
『はい!!』

 

ショウ
『今、甘酒はこんな感じだ。』

 

ショウはアルマイトの鍋蓋を開けた。

 

開けると甘い砂糖のような香りが広がった。

 

中には粥から糊状になった元米と米麹の姿があった。

 
 

フジ
『うわー。とてもトロトロしてる。』

 

ショウ
『まだ発酵しているから麹菌が生きている。このままでも甘くて、身体に良い甘酒なんだが、そのままにすると発酵しすぎて酸っぱくなって腐る。だから発酵を止めて長持ちさせるために火入れをして甘酒を仕上げるんだ。』

 

フジ
『あらら。そんなことに。』

 

ショウ
『だから、今回は木星の調理でそのまま飲む分と火入れをして発酵を止めた甘酒を両方作る。』

 

フジ
『なんとお得な。じゃあまず、そのままの甘酒をいただいても良い?』

 

ショウ
『まぁ急かすな。今淹れる。』

 

ショウは湯飲みにトロトロした出来立ての甘酒をさじで入れた。

 
 

フジ
『いただきまーす。……おぉ。ほんのり甘くておいしーー。』

 

ショウ
『これが砂糖じゃないのが不思議だよな。このままの甘酒は腹の調子も良くしてくれるから食い過ぎた夜に仕込んで朝飲むのもアリだ。』

 

フジ
『おぉ。それは良い。』

 

ショウ
『じゃあこれからまたこの雪平鍋を…取り出して…。昨日の全粥を作るみたいにこのまま煮立たせてくれ。』

 

フジ
『えっ。そんなやり方でいいの?』

 

ショウ
『そうだ、ただ焦がさないようにな。』

 

フジ
『わかりましたーー。』

 

フジは小さな雪平鍋をコンロに置き同じくらいの火の勢いにして沸騰させた。

 
 

フジ
『どれくらい沸騰させればいい?』

 

ショウ
『沸騰したら3分ぐらいで大丈夫だ。発酵は止まって甘さも増す。

 
 

フジは数分煮詰めて火を止めた。
 
 

フジ
『できたー。なんかとても甘い匂いがするー。』

 

ショウ
『これが土星調理の発酵を止める。しっかり煮切るだ。』

 

フジ
『はーい。じゃあまた湯飲みに入れて…。』

 
 

フジは加熱をして煮込んだ甘酒を湯飲みにゴムベラを使って入れた

 
 

ショウ
『それじゃあ、いただくとするか。』

 
 

2人は煮込んだ甘酒を飲んだ。

 
 

フジ
『うわーーー。めちゃくちゃ甘ーい。』

 

ショウ
『そうだろ。発酵は止まるが、甘さは加熱によって強くなる。これはそのまま甘味料としても使えるんだ。煮物の甘味に使うこともできる。
俺はこのままの甘さは苦手だからお湯や豆乳で薄めて飲んだりする。』

 

フジ
『ホント。こんなに違うなんて。色々使える甘味になるんだねぇ。

 

ショウ
『よし。これでだいたいの調理法は終わりだ。あとは自分で色々と時間作って練習するんだ。』

 

フジ
『はいっ。今までありがとうございました。あとこれから自分で新メニュー考えてみたら作ってみるわね。その時は評価お願いね。』

 

ショウ
『おうっ。楽しみにしているぞ。』
 
 
 
 

【ショウメモ】
 木星と土星調理はどうしても時間がかかる。でも作ったら保存も利くようにできるから、ビンで保存しておくと良い。
また、土星はの発酵を止める。しっかり煮切る。だけではなく、蒸留とか熟成もあるがこれは酒やチーズの応用だから自分で調べてくれ。

 
 
 
 

こうして、フジは全ての惑星調理の一部をショウから教えてもらった。
 
 
 

フジは自分の新しいメニューを考えて、暇な時は食材や調理法のアレコレを調べていた。
 
 

そしていくつかの候補が決まって作ろうと決めた時には……

 
 
 
 

その約束と希望が叶う事はなかったのだった。

 
 
 
 
 
 

つづく

 
 
 
 

ここで
重大発表!!

 
 
 

なんと3月に閉鎖していた元あやかし食堂の掲載サイト
が復活しました。

 
 

ですので、このストリエであやかし食堂は続きます。

 
 

どうぞこれからの彼女、彼らの物語をご覧いただけますと幸いです。

 
 
 
 

フェネクス聡志

 
 
 
 

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【あやかし食堂7】木星、土星メニュー

 

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

ショウ

『よし。今回で惑星調理法はおしまいだ。木星と土星をやるぞ。』

フジ

『えっ。今回も2つ作るの?』

 

ショウ

『だが、今回はオレが教える。木星と土星は時間がかかるからな。

 

フジ

『わーい。嬉しい。ちなみに木星と土星の料理ってどんなもの?』

 

 

ショウ

『簡単に言えば発酵食品を作る調理法だ。あと、木星と土星は共になって出来ている。木星で発酵を進めて拡大させて、その発酵を土星が止めるって感じだ。』

 

フジ

『発酵ってことはお味噌や醤油やお酒もそうなの?』

 

ショウ

『ああ。あとヨーグルトやぬか漬けもそうだ。』

 

フジ

『うーん。そう聞いたら1時間じゃ作れそうにないわね。』

 

ショウ

『だから、今回は1晩(8時間~10時間)でできる木星土星調理を1つ教える。』

 

フジ

『あっそれならうれしい。明日は定休日だし、朝に食べられるお料理ならなんでも応用できそう。』

 

ショウ

『じゃあ始めよう。今回は甘酒だ。しかも酒粕を使わないで米麹を使うから酒が苦手だったり、子供だったりしても大丈夫だ。』

 

フジ

『おっ。いいねー。じゃあ早く始めよー。』

 

 

 

するとショウは今日の営業で残った白飯のどんぶりと米麹の入った袋を調理台に置いた。

 

 

ショウ

『まず、残った白飯とお湯をナベに入れて全粥を作ってくれ。』

フジ
『はーい。ちなみにおかゆは月の調理だよね。』
ショウ
『そうだ。その全粥が今回の甘酒の素になるから作ってくれ。』
フジ
『かしこまりーー。』
フジは小さな取っ手の無い雪平鍋に白飯とお湯を入れてほぐしながら10分ほどで全粥を仕上げた。
フジ
『はーい。できたわよー。』

ショウ

『よし、じゃあその粥の鍋に麹をちぎって入れて混ぜてくれ。』

 

フジ

『はーい。よし……。こんな感じかな?』
ショウ
『ああ。あとは一回り大きなこのアルマイトの鍋に熱湯を入れて…。』
ショウは大きめの直径26㎝くらいのアルマイトの鍋に熱湯を入れてそのお湯に先ほどの小さな雪平鍋を浮かべて蓋をした。
ショウ
『よーし、これで朝まで待つ。ただ温度がだんだん低くなってくるから寝る前に俺が一回お湯を一煮立ちさせておく。』
フジ
『あらっ。ほったらかしでできるんだ。でも温度の管理は大変ね。
ショウ
『まぁ…本当は電気炊飯器の保温機能を使えば粥から甘酒まで1台で出来てしまうが、ウチはまだそんなにたくさんの米を炊いたりする位のお客が来ないからな。』
フジ
『じゃあもっとお客さん増えたら電気炊飯器買おう♪そうすれば甘酒屋さんもできるね。』
ショウ
『まだまだそれは先の話だろ。とりあえず今回は作り方を覚えてくれ。ここまでが木星の調理法、朝になったら発酵を止める土星を教える。』
フジ
『はーい。じゃあ、朝ちゃんと起きるために今日は早めに寝まーす。』
ショウがヤレヤレという顔をしながら鍋の様子を見ていた。
つづく・・・。
フジ
「えっ今回はつづきありなの?」
ショウ
「少し楽しみは後にとっておけって話かもな。」
【ショウメモ】
この甘酒は夏はもちろん病気等で食欲が湧かない時に好みの薄さで飲んだりしても大丈夫だ。ただ、麹菌で発酵させないと独特な栄養や身体に作用する物質は出来ない。それには植物と同じように育てる時間が必要だ。
生き物に見えなくても小さい命をいつも俺たちは取り入れていることを忘れるな。こう、息をしているだけでも見えないバクテリアも命が消えている。
つづく
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【あやかし食堂6】火星、金星調理メニュー

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【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

ショウ

『今日はまたもう少しハードルを上げるぞ。
きちんと1人でも厨房の仕事が出来るようにだ。』

 

フジ

『うへぇーー。また難しくなるのー。あと、お店に出てもショウより美味しく作れるか不安だよー。』

 

ショウ

『その不安をどーにかする為の修行だろ。やり続けないと上達しない。さっさとやるぞ。』

 

フジ

『わかりましたぁー。』

 

 

ショウ

『さて。今日は一度に2品。手際良く作ってもらう。』

 

フジ

『えっ。2品!!』

 

ショウ

『店をやると色んな注文をうけるだろ。違う料理が一度に何個も来た時にどうするか?
それに慣れないとな。』

 

フジ

『むーー。簡単な料理だといいなー。』

 

ショウ

『今回の2品の調理法は火星と金星の調理だ。
両方とも加熱。火を使うが扱い方が違う。

 

まず火星は直接火で炙る調理法だ。
炭火焼きや乾煎り、火のみ。道具は網やフライパンでも油は使わない方法だ。』

 

フジ

『つまり、焼き鳥や食材をローストする。ということね。』

 

ショウ

『そうだ。シンプルに。
あと金星は油を使う。揚げ物や炒め物、菓子でもクリームや油の多い焼き菓子になれば金星になる。』

 

フジ

『うわっ。すごく美味しそー。……でも待って、コンロ最低でも2つ使って同時調理って……とても難しいじゃない。』

 

ショウ

『つべこべ言わすにやるんだ。ここまでしっかり自分の頭使ってやってきたからもうひと踏ん張りだ。』

フジ
『わかったわ。じゃあまた食品庫にいって頭冷やしながら何作るか考えてくるわ。

 

ショウ
『今回の時間は45分。焼いたり揚げたりするから火の扱いには気をつけろよ。』

 

フジ
『はーい。』

 

そう言ってフジは食品庫へ行った。

 

ショウはいつものホールの4人掛けの座った。

 

久しぶりに手に入った紅茶を淹れようと背後の棚に隠してある茶漉し、ティーカップを取り出した。

 

そして茶漉しに紅茶を小さなさじで2杯、やかんの残り湯を入れて数分蒸らした。

 

フジが食品庫から出てきたのを見て、ショウは多少の心配はありながらも姉であるフジの力を信じていた

 

なんとなく、自分だけでなく他の妖たちが人間が作り出している新しい生活に淘汰されてしまうこと。

 

自分も対応できる部分はあると思うが、やはりそこは女が一番環境の変化に対応できる。

 

その将来の期待も掛けて初歩的な所をショウは教えようと決めたのであった。
あと、自分がもし何かあった時の為でもあった。多少亡くなった母親から言われていた5臓の働きが普通より弱いこと。

 

それも気にかけていた。人間で言えば壮年を過ぎている。若いわけではないからリスクを考えて行動しないといけない。

 

そんな想いを数十分繰り返して紅茶をすするのだった。

 

厨房が見えないこの席は視覚以外の情報でできる料理を想像しながら待つことが出来たり、内密な状態で話をしたい時にはとても良い。

 

だから基本ランチの時は案内しない。3人以上の場合以外は。

 

香ばしい何か肉や魚以外の何かの香りに、土砂降りの雨に似た高温の油が音を立てている。
ショウはできる料理を楽しみに待った。

 

フジ
『できたわよー。ふぅ。なんとか40分でできたー。』

ショウ

『おぅ。何が出来たんだ?』

 

フジ

実はお肉を焼きたかったんだけど無かったから厚揚げの網焼きが1つ。

 

それと、金星の揚げ物を付け合わせとして、ナスとビーマンの素揚げ。
その2つにお好みでショウガ醤油とかつおぶし。が付け合わせでーす。』

 

ショウ
『おおっすげぇ、別の調理法を1つの皿にまとめるとは。調理法としては合格だ。』

 

フジ
『えへへ。ありがとー。あとやっぱり…お酒もちょっと飲んで良い?』

 

ショウ
『…やはりそれが目的で作ったのかよ。ヤレヤレ。今日は良いが、ちゃんとランチが主で使える料理も作っていけよ。』

 

フジ
『はーい。じゃあ、そのためにはお肉とお魚も切らさないようにしてくださいねー。』

 

ショウ
『へいへい。じゃあいただこう。』

 

フジ
『いたたきまーす。』

 

こうしてフジは2つの調理も同時に行えるようになった。

 

厚揚げの火の通りも程よく、油抜きを軽くしていたのでくどさがなかった。

 

また、野菜の揚げ物もあく抜きと水気をしっかり切る手間をフジはショウがやっているところをしっかりと見て覚えていたので

 

揚げ物も失敗せずに行えたのであった。

 

【ショウメモ】

 

揚げ物は水分が多い食材は必ず油跳ねを起こす。イカの天ぷらは特に跳ねるので気をつけること。

 

また、網焼きも肉や魚で脂の多い部分を焼くと火に勢いが付きすぎて火事になりやすいので一度に大量の脂身は焼かない事だ。

 

特にカルビ、ホルモンは注意。

 

 

つづく

 

 

 

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【あやかし食堂5】水星調理メニュー

 

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【弟とのおもいで】

 
 
 
 

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

 

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 
 
 

『よし。今日は水星の調理だ。』

 
 

『ししょー。お願いします。』

 
 
 

『水星は温度、時間、撹拌、pH調整などで形が変わる。と覚えてくれ。』

 
 

『なんかいきなり難しい用語が…。』

 
 

『生クリームでいうと分かりやすい。生クリームはそのままだと液体のクリーム。

 

それを鍋で温めると幕が張ったクリーム。

 
 

それにレモン汁を加えて混ぜると簡単なチーズができる。

 

温めたクリームに砂糖を混ぜて溶かして冷やして固めるとクリーム味のアイスができる。』

 
 
 
 

『あっなるほど、そう思えば形が温度やその他の処理で変わって美味しくなってる。
 

今思い出したんだけど、
 
果物を人間が使うミキサーっていう機械に入れてジュース作るのも水星?』

 
 

『そうだ。混ぜる。つまり撹拌に当てはまるしな。また、生クリームも砂糖入れて泡立てれば、コーヒーや洋菓子に必要な固さのクリームに変わるだろ?』

 
 

『あっ。なんか楽しくなってきた。』

 
 
 

『フジは本当に単純な奴だな。』

 
 
 

『なんですって!!もう…お茶目っていってよ。』

 
 
 

『へいへい。じゃあ、今日も自分で作ってみてくれ。食品庫の中なら何でも使っていいぜ。』

 
 

『えへへ。ずっとクリームの話してたから、クリームのお菓子作ろー。』

 
 
 

『だが、さっき俺が言ったチーズやアイス以外で作ってくれよ。』

 
 

『うわっ。いきなり追加ルール。分かったわよ。あと、今回の制限時間は?』

 
 
 

『今回は温度を変化させたり、混ぜたりする作業もあるから90分だ。その間俺は明日の食材の買い出しに行ってくるから。留守番も含めてよろしく頼むぜ。』

 
 
 
 

『はーい。いってらっしゃーい。』

 
 
 
 

ショウは店を出て行き買い出しへ。

 
 
 

フジは食品庫へ貴重な生クリームとその他自分がイメージした料理になるものを2つ持ってきた。

 
 
 
 

材料は

 

生クリーム

 

砂糖

 

粉ゼラチン

 

 
 
 
 

『よーし。これでババロアを作るぞ。』

 
 

 
 

フジはまず、粉ゼラチン10gを大さじ1の水と混ぜてふやかした。

 
 

その間に

 

持ってきた生クリームの3分の1の200mlをミルクパンに入れて火に掛けた。鍋の生クリームが沸騰寸前になったら火を止め先ほどのふやかしたゼラチンを入れ溶かした。

 
 

そして残りの生クリーム400mlと砂糖60gをボウルに入れ泡だて器で撹拌。少しトロミが付くくらい(3分立て)に泡立てたら、鍋のゼラチンクリームをボウルに入れまんべんなく混ぜた。

 
 

それから、小さな耐熱のガラス容器4つに流し入れ、4つまとめて冷蔵庫に入れ冷やし固めた。

 
 
 
 

『えへへ。固まるの楽しみー。ショウが気に入ると良いなー。』

 
 
 
 

フジは冷え固まるまで今までショウから教えてもらった事を思い出しながら、自分のノートに調理のまとめを書いた。

 
 
 
 

『太陽は生食と乾物。太陽の恵み。月は茹でたり蒸したり煮込んだり、スープにしたりする調理。っと…。』

 
 

そして50分くらいしてショウが買い出しから帰ってきた。

 

ショウは珍しいくらいの笑みを浮かべていた。

 
 

 
 

『ただいまー。へへへ。フジ良いもの仕入れてきたぞ。』

 
 

『おっかえりーショウ。えへへ。こっちも良いもの作って待ってたわよー。』

 
 

『おうっ。じゃあ先にフジから作ったものを見せてくれ。』

 
 

『じゃっじゃーん。ババロアだよー。生クリームを贅沢に使ってみたよ。』

 
 
 

『あっ!!やっぱりそうか。生クリーム系の菓子は作るかと思っていたから生クリーム買足してきてよかったぜ。さて…俺のはこれだ。』

 
 
 
 

ショウは茶色の紙袋からプラスチックパックに入ったいくつか入っている赤い木の実をテーブルに出した。

 
 

『うわっ。すごい。これイチゴ!!あの温かい海の町の石垣にできる…。』

 
 

『そうだ。この酸っぱさはババロアや生クリームの菓子に合うって人間の料理雑誌に載ってたから。あと売れ残りだったから安く買えた。』

 
 

『わーい。じゃあ薄く切って…ババロアの器に乗せて…かわいーー!!』

 
 

『本当に女子はこういったまろやかな菓子が好きだよな。一応水星の調理ということは合格。
ただ、今回はババロアだからいいけど、生クリームにバターや卵、砂糖が多めで小麦粉も混ぜて焼くようなクッキーやケーキはまた後で出てくる惑星調理になるからな。』

 
 

『えっこれからお菓子また作れるの?うれしー。』

 
 

『菓子ばかりじゃ病気になるぞ。まぁとりあえず今日はイチゴ乗せババロアをいただこう。』

 
 

『はーい。いただきまーす。』

 
 

 
 

 
 

こうしてショウのイチゴをちょい足ししたババロアを美味しく2人はいただいた。

 
 
 
 

【ショウメモ】

 
 

ババロアでなくても寒天で固めたゼリーでもOK。水ようかんは寒天とあんこを使った立派な水星調理の菓子だ。また、たれやドレッシングも撹拌して作るから水星にあてはまる。擦ったとろろも混ぜた卵白も形が変わるから色々な料理に使えるぞ

 

あと残ったイチゴはジャムにしておいた。ジャムはレモン汁の酸でゲル化して固まるけど煮詰めているので月。まぁ水星も使用した月調理と捉えてくれ。

 

何種類か合わせた調理はいくらでもあるからどんどん経験してみてくれ。

 
 

 
 

 
 

つづく

 
 

 
 

 
 

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【あやかし食堂】4月調理法

 

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【弟とのおもいで】

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

 

 

ショウ

『よし。今日は月の調理法を教える。』
フジ
『はい。おねがいしまーす。ししょー。』
ショウ
『月は生じゃなくて、加熱してあるもの。イメージで言えば加熱した液体。
汁物や土鍋で炊いた飯、あとは煮物。液体と食材が一緒に加熱されて出来る調理だ。』
フジ
『火は使うけど、お鍋で煮炊きする程度でできるごはんなのね。』
ショウ
『そうだ、注意点としては焦げ付きだけは気を付けないといけない。炭は旨くないし、身体に毒だからな。』
フジ
『はーい。ちゃんと火のそばから離れません♪』
ショウ
『よし!!じゃあ今回から厨房内にある食材と厨具と調味料で自分で作ってもらう!!』
フジ
『えーーー!!教えてくれないのーー?』
ショウ
『ばろきしょい!!自分の創造力とある一定の規則だけ守れば料理は作れる。あの太陽の調理だって俺がじぃさんの見様見真似で作った初めての料理だったんだぜ。
失敗してもいいから自分がおいしくできたイメージが浮かぶ料理を逆再生してみろ。すると何を作ればいいか?が分かる。』
フジ
『うーーーーーん。分かったわ。ちょっと想いふけってやってみるわね。』
ショウ
『時間は30分だ。』
フジ
『うへぇーーー。分かりましたぁ。』
ショウはそのまま厨房の外のホールの4人掛けの席でほうじ茶を飲み、フジは食品庫へ行った。
フジは食品庫内のにおいと自分が何を食べてみたいか。
ただ月の調理法のルールだけは守った状態で考えてみた。
5分くらいして
フジは食品庫から厨房へ戻り調理を始めた。
フジ
『じゃあ始めるわねー。ちょっと…恥ずかしいからあまり見ないでね。』
ショウ
『あぁ。後ろ向いて本読んでるからあと25分だから時間だけは守れよ。』
フジが食品庫から持ち出したのは
さつまいも
本みりん
醤油
そして、炒ってある黒ゴマ。
さつまいも1本を乱切りにし、水が入った雪平鍋に入れひと煮立ち。
それから本みりんを大さじ1入れて甘い香りが漂ったあとに醤油も同量入れ煮る。
さつまいもに竹串が刺さったら火を少し強めにして味が全体的に絡むようにさつまいもがつぶれないように軽く混ぜ火を止めた。
煮物用の器に盛り付け最後に黒ゴマを振りかけて、完成させた。
フジ
『お待たせしました。時間20分でなんとか完成!!』
ショウ
『ん?これは甘藷煮か。とても地味だな。』
フジ
『んーとね。なんかさ。悪い事も思い出しそうだけど、戦時中さ…
2人で雑炊程度の食堂だったけど米は全部お客様用の雑炊にして、残っている材料はさつまいもだけで水で煮てそのまま食べていたじゃない。』
ショウ
『あぁ。あの時はみんな生きるだけでも大変だったからな。まずくても腹に何か入れておかねぇと死んじまうからな。』
フジ
『その頑張って乗り越えたご褒美♪さつまいも煮をとても甘くて香ばしい醤油味にしましたーー!!ってところかな。』
ショウ
『ご褒美にしては地味過ぎるがまぁいいだろ。いただきます。』
ショウはさつまいも煮に箸をつけた。
横でフジがワクワクしたまなざしで見つめ、ショウは口に入れ咀嚼。そして飲み込んだ。
フジ
『どっ、どう?美味しい?』
ショウ
『ガキには良いかもな。』
フジ
『それ…どういうこと!?』
ショウ
『甘くて醤油の味もしっかりしている。でも、俺たちのように乗り越えた奴らの中には甘藷煮や馬鈴薯煮を見るだけで戦争の時の事を思い出して苦しむのがいるかもしれない。』
フジ
『あっ。そっそうか。…ごめん。』
ショウ
『俺は平気だけど、たまにそういう奴もいる。だから提供するときは煮物は選べるようにするのも良いかもな。同じ月調理ならほうれん草のお浸しでも大丈夫だから煮物どちらがいいか?って。』
フジ
『そうね。匂いと味、触感は記憶を思い出させることがあるしね。気を付けるわ。』
ショウ
『あと、生まれつき食べられない食材がある奴もいる。俺が品書き表に食材を入れているのはそのためだ。
医食同源。時に薬も食べ物も時には毒になってしまう事もあるんだ。』
フジ
『今日。とても良い事聴いた。』
ショウ
『そこも考えながらやっていこう。ただ…今日の甘藷煮は旨かった。それは合格!!以上。ごちそうさま。』
こうしてフジは食べ物は美味しければ良いということだけではなく、食事が人生に影響を与えてしまう力がある。そのショウの言葉を教訓にするのであった。
【ショウメモ】
あまり神経質になる必要はないが、ここ10年。人間の食べ物、特に工場
で加工した食品もたくさん出てきている。味もしっかりしていて飽きもこない。悪いとは言わないが、食べ過ぎると栄養の摂り過ぎと偏りにも繋がる。毎日同じ物ばかりを食べないことだ。
それにより病気も増えてきたりして体の変化が著しくなっているのかもしれないな。

 

 

 

つづく

 

 

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【あやかし食堂】3太陽調理法

 

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 

【弟とのおもいで】

 

 

街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。

 

まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。

 

 

 

 

 

ショウ
『フジ!!一応お前もめしやの妖なんだから、給仕だけじゃなくて料理のやり方も覚えないとな。』

 

フジ

『うへぇー。』

 

ショウ

『何がうへぇー。だよ。簡単なものから教えるから時間を作って自主練してくれよ。』

 

フジ

『んーもう、分かったわよ。超簡単なのを始めにお願いね。寝ててもできちゃうのとか(笑)。』

 

ショウ
『てやんでぃ!!ばろきしょい!!寝ててめしができたら神さんいらねぇんだよ。』

 

フジ

『ひぇーー。お手柔らかに、ショウさまーー。』

 

ショウ
『じゃあ、教える。家に代々伝わる医食同源の書。【既死改生の厨活】にある惑星調理法の太陽を今日は教える。』

 

フジ
『ししょー。お願い致します!!』

 

 

ショウ
『太陽の調理法は生食と乾燥。つまり太陽の恵みをそのまま食べられるやり方だ。』

 

フジ
『生だと……サラダや橘を絞ったジュースとかもそう?』

 

ショウ
『そうだ。加熱しないメニューだな。』

 

フジ
『乾燥だと……なんだろ?ジャーキーとかドライフルーツとか魚の干物とか?』

 

ショウ
『そうだ。こちらは生にはならないが、太陽の光と恵みを浴びて作るからより栄養も取れる。
ちなみに海苔も、塩も太陽だ。ちゃんと天日干ししているなら。』

 

フジ
『天日干しではない場合はどうなるの?』

 

ショウ
『それはのちに出てくり火星になる。

乾燥と加熱を火力を使って行うからな。

ちなみにドライフルーツも天日干しではなく他のやり方で作った場合は太陽にならない。』

 

フジ
『お日様にずっと当ててるのは時間かかるし。
鳥や他の生物に食べられてしまう事もあるから今は人間が作る工場で作られているのが多いよね。』

 

ショウ
『どの手間を省くか。
どの手間とこだわりはしっかり掛けるか?
あと効率良くしないと飯屋はできねぇからな。
全て完全無欠にはならねぇが、出来ることを精一杯やって仕舞えばいい。』

 

フジ
『じゃあ、そろそろ一例のメニューを……。(お腹空いたー)』

 

 

ショウ
『今日はきゅうりの海草和えだ。
とても簡単にできるから実際に包丁を持ってやってみてくれ。
まず、きゅうりを2ミリくらいの薄さで輪切りだ。」

 

フジ
『うわぁ…きんちょーー。』

 

 

ストン……ストン……。

 

とゆっくり不規則な包丁の音がまな板から響いた。

 

 

フジ
『2ミリってむずかしーー。これくらいの厚さ?』

 

ショウ
『あぁ。それくらいでいい。ちなみに包丁を使うのはこの作業しかないから2本全部切ってくれ。』

 

フジ
『はーーい。』

 

 

ストン……ストン……。

 

 

なんとかフジはゆっくりではありながらもショウが用意したきゅうりを全て切り終えた。

 

 

まな板には薄いきゅうりが山盛りになっていた。

 

 

 

ショウ
『おぅ。遅かったじゃねーか。日が暮れるかと思ったぜ。』

 

フジ
『5分しか経ってません!!じゃあ次お願いします。』

 

ショウ
『次は塩昆布軽く一掴み(0.5gほど)と醤油小さじ1/2(2.5mlほど)をいれてきゅうりを混ぜてしばらく置いておくだけだ。

塩昆布は乾物だからそのまま太陽調理で出来た食材っていうお得で色々な料理にも使える。
もちろん醤油もだ。』

 

フジ
『醤油も太陽なの?』

 

ショウ
『いや。醤油は太陽じゃない。
もっと後に出てくる木星と土星になるな。
味噌もだが発酵食品は多少複雑だから。
今は味付けに必要な調味料と思っていてくれれば良い。』

 

フジ
『はーい。じゃあ大きな器にきゅうりを入れて、塩昆布、醤油を混ぜて。
ちょっと冷蔵庫で5分くらいでいいわよね。』

 

ショウ
『あぁ。それくらいでいい。』

 

 

5分後。

 

 

 

フジ
『うわー。きゅうりが小さくなってる。』

 

ショウ
『きゅうりや生の野菜は塩の強いものと混ぜると水が出て小さくなるんだ。

これくらいの軽い浅漬けやサラダは簡単な太陽調理の1つ。
この水が出たきゅうりをまたまんべんなく混ぜる。それで出来上がりだ。』

 

フジ
『わーい。できた。
ランチの小鉢や…あっおつまみの1つにもなるよね♪』

 

ショウ
『…わかったよ。
ほんの少しだけだぞ、あまり呑み過ぎるなよ。』

 

フジ
『えへへ。頂きものの清酒と一緒に…

 

いただきまーす。

 

 

うーん。おいしーー。』

 

ショウ
『おい!!先に酒から呑んでどーすんだ!!

きゅうりをきちんと食え!!』

 

 

と言いショウはフジが作ったきゅうりの海草和えを食べた。

 

 

ショウ
『おぉ。いける。
これはまぁ簡単だったからな。
よし!!明日から朝の仕込みでお前がコレを作れ。』

 

フジ
『えっ良いの?簡単だからうれしー。
また、私に出来そうな料理あったら教えてね。ショウ。』

 

ショウ
『まぁ考えておく。
あとは自分でもどんどん勉強と練習をすることだぞ。
なんでも全て教えてもらって
その範囲でこなそうとしたら店はできないからな。』

 

フジ
『うへぇーーー。……わかりました。』

 

 

 

 

こうしてフジは太陽調理の1つ。

 

 

きゅうりと海草和えを習得した。

 

 

 

【ショウメモ】

野菜はきゅうりだけじゃなく、キャベツや50度の水で1分つけたモヤシでも大丈夫だ。
俺はあまり好きじゃないが巷にある出汁醤油(めんつゆ)と玉ねぎでも生でバリバリ食べられる。

 

好みで生の卵黄を落として鰹節も混ぜると玉ねぎの辛さを気にせずに食える。

 

とりあえず、生で食える野菜なら何でも挑戦してみろ。

 

 

 

つづく

 

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【あやかし食堂2】プロローグ

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

 

ここは元々原住民である妖(あやかし)と戦争で勝利し
た人間が共存する島。

 

 

戦争が終わって10年。

 

すっかり、人間が持ってきたハイテクな技術と機械、知識によりこの島も豊かになった。

 

妖も敗戦の経験により人間を受け入れて仲良くすることが出来るようになった。

 

 

ただ、それにより失われたものもあった。

それは妖の健康。
人間の持ってきた恩寵は全て妖の心と身体に合うとは限らなかった。

すぐ、アレルギーのような症状が出て亡くなった者。中毒を起こすくらいに乱用して依存から抜け出せなくなった者。少しずつ心身の機能が落ちて、老化も早まってしまう者。

 

……特に、飲食物の被害が顕著だった。特に戦後5年までは。

 

 

そして、島の都市部に小さな食堂がある。

元々は薬を作っていた家系の妖だったが、戦時中から少ない食材で周りの健康を守りたい。
そう考え薬堂を食堂に変えた。

 

この食堂を切り盛りしていた妖の双子の姉弟。

 

特に弟は終戦後。

人間の食べ物が増える中、新しい食材を妖に合うように料理の研究に励んでいた。

 

しかし、10年が経ったある日。弟の身体に異変が生じた。歩行障害により彼は厨房に出ることができなくなった。

 

代わりにいつもホールで持ち前の明るさとお世話好き、ちょっと料理は苦手な姉が1人でこの食堂を切り盛りすることになった。

 

介護とお店の両立。

長くは続かなかった。半年で弟の魂は旅立っていった。
姉はなんの迷いもなく食堂を完全に1人で再スタートさせる事を決意した。

また自分の料理を上達させる。お客様も新たに作って来る方が妖でも人間であっても元気になって欲しい。

 

その熱意と明るさを持って今日も【あやかし食堂】の看板を出していた。

 

 

フジ”

『よーーし。今日もよろしくお願いしまーーっす。』

 

 

 

 

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【あやかし食堂1】薬草スープ

 

キャラクターのイメージや設定はこちら(見ると文章のイメージがつかみやすいです)。

ここは人間が戦争により権利を得た妖(あやかし)の島。その島の中心都市にある小さな食堂。
フジという元薬師家系の妖が1人で切り盛りしている。

 

今日もある程度の家事を済ませて、時間がかかる料理を済ませて、ホール全体を掃除をして看板を外に出した。

 

 

「さーて看板も出したし、仕込みの続きっと。」

 

「お米も炊けたからおにぎりと茹でハーブを出せる、丸パンも焼けているからハーブサラダとセットで出せる…。あっ。薬草スープを作ってなかったわ!!」

 

「さて!!作りましょう。」

 

「えーっと、乾燥させた昆布をお鍋に入れて水で戻して。その間に・・・具材はなんでもいいんだけど…今日残っている物は…。」

 

冷蔵庫を探すフジ。しかし、あったのは緑と白のグラデーション野菜のみ。

 

「あっ。矢切ネギしかない!!んーー。でも生のままで小さく切ってその上から薬草スープをかければおいしいし、身体のいらない物を出す効果も強くなるからそれにしちゃおう。」

 

その頃ちょうど昆布がお鍋いっぱいに広がって海の香りが微かに広がっていた。

 

「よし、火をつけて、沸騰して出汁がしっかり取れたら昆布は取り出して。この昆布はまた佃煮や煮物に使えるから取っておいて。今日はシンプルに昆布のみの出汁で、そこに味噌を溶いて…薬草スープのできあがり。」

 

「よし、お客様が来たらご飯かパンかを選んでもらってメインはやっと慣れてきた魚の煮物。それにスープを出せば大丈夫。
1人でなんとかできる。」

 

「…それにしても最近は特に人間の食べ物や調理法が増えたから覚えることもしなきゃだけど、いらない物が身体に溜まって病気になることもあるからそれのコントロールはできるごはんは作りたいな。」

 

「…弟のショウみたいに若く亡くなったり、病気になったりする人が増えたら悲しいもの。」

 

こうしてフジは太陽の下で馬が楽しむランチ~太陽が沈んで鶏が月と出会う時間まで1人で無理なくこなせる時間までこの食堂を営業している。

 

そして、この都市にある小さな食堂へ来るお客も何かしら色々な想いを持ってやってくるのだった。

 

つづく。

 

Ps.ストリエ(2021年3月閉鎖)にありました【あやかし食堂】の物語もこちらのブログページでも出していきます。