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ショウ
フジ
『えっ。今回も2つ作るの?』
ショウ
『だが、今回はオレが教える。木星と土星は時間がかかるからな。
フジ
ショウ
『簡単に言えば発酵食品を作る調理法だ。あと、
フジ
『発酵ってことはお味噌や醤油やお酒もそうなの?』
ショウ
『ああ。あとヨーグルトやぬか漬けもそうだ。』
フジ
『うーん。そう聞いたら1時間じゃ作れそうにないわね。』
ショウ
『だから、今回は1晩(8時間~10時間)
フジ
『あっそれならうれしい。明日は定休日だし、
ショウ
『じゃあ始めよう。今回は甘酒だ。
フジ
『おっ。いいねー。じゃあ早く始めよー。』
するとショウは今日の営業で残った白飯のどんぶりと米麹の入った
ショウ
『まず、残った白飯とお湯をナベに入れて全粥を作ってくれ。』
ショウ
フジ

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ショウ
『今日はまたもう少しハードルを上げるぞ。
きちんと1人でも厨房の仕事が出来るようにだ。』
フジ
『うへぇーー。また難しくなるのー。あと、
ショウ
『その不安をどーにかする為の修行だろ。
フジ
『わかりましたぁー。』
ショウ
『さて。今日は一度に2品。手際良く作ってもらう。』
フジ
『えっ。2品!!』
ショウ
『店をやると色んな注文をうけるだろ。
それに慣れないとな。』
フジ
『むーー。簡単な料理だといいなー。』
ショウ
『今回の2品の調理法は火星と金星の調理だ。
両方とも加熱。火を使うが扱い方が違う。
まず火星は直接火で炙る調理法だ。
炭火焼きや乾煎り、火のみ。
フジ
『つまり、焼き鳥や食材をローストする。ということね。』
ショウ
『そうだ。シンプルに。
あと金星は油を使う。揚げ物や炒め物、
フジ
『うわっ。すごく美味しそー。……でも待って、
ショウ
『つべこべ言わすにやるんだ。
ショウ
フジ

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今思い出したんだけど、
果物を人間が使うミキサーっていう機械に入れてジュース作るのも

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【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。
ショウ
つづく

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【弟とのおもいで】
街の灯りがぼんやりし始めた鶏の刻。お店を閉めた後。
まだショウが元気でフジの料理修行が厨房で行われていた頃の話。
ショウ
『フジ!!一応お前もめしやの妖なんだから、給仕だけじゃなくて料理のやり方も覚えないとな。』
フジ
『うへぇー。』
ショウ
『何がうへぇー。だよ。簡単なものから教えるから時間を作って自主練してくれよ。』
フジ
『んーもう、分かったわよ。超簡単なのを始めにお願いね。寝ててもできちゃうのとか(笑)。』
ショウ
『てやんでぃ!!ばろきしょい!!寝ててめしができたら神さんいらねぇんだよ。』
フジ
『ひぇーー。お手柔らかに、ショウさまーー。』
ショウ
『じゃあ、教える。家に代々伝わる医食同源の書。【既死改生の厨活】にある惑星調理法の太陽を今日は教える。』
フジ
『ししょー。お願い致します!!』
ショウ
『太陽の調理法は生食と乾燥。つまり太陽の恵みをそのまま食べられるやり方だ。』
フジ
『生だと……サラダや橘を絞ったジュースとかもそう?』
ショウ
『そうだ。加熱しないメニューだな。』
フジ
『乾燥だと……なんだろ?ジャーキーとかドライフルーツとか魚の干物とか?』
ショウ
『そうだ。こちらは生にはならないが、太陽の光と恵みを浴びて作るからより栄養も取れる。
ちなみに海苔も、塩も太陽だ。ちゃんと天日干ししているなら。』
フジ
『天日干しではない場合はどうなるの?』
ショウ
『それはのちに出てくり火星になる。
乾燥と加熱を火力を使って行うからな。
ちなみにドライフルーツも天日干しではなく他のやり方で作った場合は太陽にならない。』
フジ
『お日様にずっと当ててるのは時間かかるし。
鳥や他の生物に食べられてしまう事もあるから今は人間が作る工場で作られているのが多いよね。』
ショウ
『どの手間を省くか。
どの手間とこだわりはしっかり掛けるか?
あと効率良くしないと飯屋はできねぇからな。
全て完全無欠にはならねぇが、出来ることを精一杯やって仕舞えばいい。』
フジ
『じゃあ、そろそろ一例のメニューを……。(お腹空いたー)』
ショウ
『今日はきゅうりの海草和えだ。
とても簡単にできるから実際に包丁を持ってやってみてくれ。
まず、きゅうりを2ミリくらいの薄さで輪切りだ。」
フジ
『うわぁ…きんちょーー。』
ストン……ストン……。
とゆっくり不規則な包丁の音がまな板から響いた。
フジ
『2ミリってむずかしーー。これくらいの厚さ?』
ショウ
『あぁ。それくらいでいい。ちなみに包丁を使うのはこの作業しかないから2本全部切ってくれ。』
フジ
『はーーい。』
ストン……ストン……。
なんとかフジはゆっくりではありながらもショウが用意したきゅうりを全て切り終えた。
まな板には薄いきゅうりが山盛りになっていた。
ショウ
『おぅ。遅かったじゃねーか。日が暮れるかと思ったぜ。』
フジ
『5分しか経ってません!!じゃあ次お願いします。』
ショウ
『次は塩昆布軽く一掴み(0.5gほど)と醤油小さじ1/2(2.5mlほど)をいれてきゅうりを混ぜてしばらく置いておくだけだ。
塩昆布は乾物だからそのまま太陽調理で出来た食材っていうお得で色々な料理にも使える。
もちろん醤油もだ。』
フジ
『醤油も太陽なの?』
ショウ
『いや。醤油は太陽じゃない。
もっと後に出てくる木星と土星になるな。
味噌もだが発酵食品は多少複雑だから。
今は味付けに必要な調味料と思っていてくれれば良い。』
フジ
『はーい。じゃあ大きな器にきゅうりを入れて、塩昆布、醤油を混ぜて。
ちょっと冷蔵庫で5分くらいでいいわよね。』
ショウ
『あぁ。それくらいでいい。』
5分後。
フジ
『うわー。きゅうりが小さくなってる。』
ショウ
『きゅうりや生の野菜は塩の強いものと混ぜると水が出て小さくなるんだ。
これくらいの軽い浅漬けやサラダは簡単な太陽調理の1つ。
この水が出たきゅうりをまたまんべんなく混ぜる。それで出来上がりだ。』
フジ
『わーい。できた。
ランチの小鉢や…あっおつまみの1つにもなるよね♪』
ショウ
『…わかったよ。
ほんの少しだけだぞ、あまり呑み過ぎるなよ。』
フジ
『えへへ。頂きものの清酒と一緒に…
いただきまーす。
うーん。おいしーー。』
ショウ
『おい!!先に酒から呑んでどーすんだ!!
きゅうりをきちんと食え!!』
と言いショウはフジが作ったきゅうりの海草和えを食べた。
ショウ
『おぉ。いける。
これはまぁ簡単だったからな。
よし!!明日から朝の仕込みでお前がコレを作れ。』
フジ
『えっ良いの?簡単だからうれしー。
また、私に出来そうな料理あったら教えてね。ショウ。』
ショウ
『まぁ考えておく。
あとは自分でもどんどん勉強と練習をすることだぞ。
なんでも全て教えてもらって
その範囲でこなそうとしたら店はできないからな。』
フジ
『うへぇーーー。……わかりました。』
こうしてフジは太陽調理の1つ。
きゅうりと海草和えを習得した。
【ショウメモ】
野菜はきゅうりだけじゃなく、キャベツや50度の水で1分つけたモヤシでも大丈夫だ。
俺はあまり好きじゃないが巷にある出汁醤油(めんつゆ)と玉ねぎでも生でバリバリ食べられる。
好みで生の卵黄を落として鰹節も混ぜると玉ねぎの辛さを気にせずに食える。
とりあえず、生で食える野菜なら何でも挑戦してみろ。
つづく

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ここは元々原住民である妖(あやかし)と戦争で勝利し
た人間が共存する島。
戦争が終わって10年。
すっかり、人間が持ってきたハイテクな技術と機械、知識によりこの島も豊かになった。
妖も敗戦の経験により人間を受け入れて仲良くすることが出来るようになった。
ただ、それにより失われたものもあった。
それは妖の健康。
人間の持ってきた恩寵は全て妖の心と身体に合うとは限らなかった。
すぐ、アレルギーのような症状が出て亡くなった者。中毒を起こすくらいに乱用して依存から抜け出せなくなった者。少しずつ心身の機能が落ちて、老化も早まってしまう者。
……特に、飲食物の被害が顕著だった。特に戦後5年までは。
そして、島の都市部に小さな食堂がある。
元々は薬を作っていた家系の妖だったが、戦時中から少ない食材で周りの健康を守りたい。
そう考え薬堂を食堂に変えた。
この食堂を切り盛りしていた妖の双子の姉弟。
特に弟は終戦後。
人間の食べ物が増える中、新しい食材を妖に合うように料理の研究に励んでいた。
しかし、10年が経ったある日。弟の身体に異変が生じた。歩行障害により彼は厨房に出ることができなくなった。
代わりにいつもホールで持ち前の明るさとお世話好き、ちょっと料理は苦手な姉が1人でこの食堂を切り盛りすることになった。
介護とお店の両立。
長くは続かなかった。半年で弟の魂は旅立っていった。
姉はなんの迷いもなく食堂を完全に1人で再スタートさせる事を決意した。
また自分の料理を上達させる。お客様も新たに作って来る方が妖でも人間であっても元気になって欲しい。
その熱意と明るさを持って今日も【あやかし食堂】の看板を出していた。
フジ”

『よーーし。今日もよろしくお願いしまーーっす。』

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